中外日報 1929年(昭和4年)11月7日付より引用 密航関係書類を偽造する者激増
1928(昭和3)年7月以降、在住地警察署に渡航を申請して交付された紹介状(渡航証明)と戸籍謄本を持って釜山に向かい、釜山水上警察署であらためて渡航を認可する制度が実施されたこともあり、1929(昭和4)年の釜山での渡航諭止数は9,405人となり、前年の153,570人から大きく減った。
内務省警保局『社会運動の状況2 昭和五年』(三一書房 1971)1204、1205ページの統計によれば、1930(昭和5)年1月から11月末に発覚、摘発された不正渡航者は418名あるが、そのうち朝鮮に送還されたのは210名であり、193名がそのまま目的地へ向かうことを許されている。
また、不正渡航を企図した者に対する処罰は、大多数は説諭もしくは訓戒ののち故郷送還であり、紹介状(渡航証明)や印章、雇傭証明書を偽造した者のうち一部だけが送致、罰金刑に処されていたことが、『高等警察要史』(慶尚北道警察部 1934)の149ページ、1928(昭和3)年7月~1929(昭和4)年5月の「不正手段に依る内地渡航者処分調」に記されており、不正渡航に対して厳しい処罰で臨んでいたとは考えにくい。
本資料は韓国国史編纂委員会韓国史データベースに所蔵。
IV_080
- Author
Page 1
◇密航関係書類を偽造する者激増
釜山の続き
毎日三、四件
毎年千余件の統計を示し
悪徳客引軍の跋扈
渡航証明とは、本籍地の警察から貰ってくるものだ。これと戸籍謄本を持って来た中から、再度水上署員が選択して送る。この書類を偽造して検挙された者の数が、どれ程になるか分からない。当局では、その数字を発表するのを厭っている。ある人は、毎日三、四件は必ずあるという。少なくとも、一年に千余件の犯罪が渡航措置で発生しているだろうと言う。当局でその数字を明示する前には、我々がこうして推測するとしても、やむを得ない事と言う他ないのではないか。密航を企てる者、或いはそれを生業とする者、これを利用し詐欺と横領を犯す者の数が少なくなく、農村で世間を知らず暮らした者が釜山埠頭に下れば、彼らには天地が馴染まないだろう。船にさえ乗れば日本に往来できるのは分かるが、船に乗れないのだ。横でこの様に語る者がいるのだが、金銭をどれ程も持っていなくとも、彼らは行く事を望む。客引きする者について行き、高い食費に酒一杯出すのだが、また運動費に持って来た金銭を全て使い密航できると思うと発覚し、彼らは主人に追い出され、通りを彷徨う身となる。密航するとしても、その全てが発覚し目的に達せず、罪だけを犯す事となる。
同様に起った問題を上げると、証明偽造、詐欺、横領、威嚇、密航等。全ての犯罪を並べると、当局での対抗策は、犯罪を促す以外、何も効果がないではないか。